2018年7月4日水曜日

言ってはいけない中国の真実 / 橘 玲



橘氏は作家ですが、本書はノンフィクションのレポートです。
本来ならこういう内容はマスコミが日頃周知すべきことだと思うのですが、日本のマスコミは偏向報道どころか出鱈目なフィクションばかり流していて、当てにならんですからね。
その点、氏は非常に冷静に公平な視点で観察と分析を行っていると感じました。
先入観や思い込みではなく、見て聞いたことを脚色せずに忠実に描かれています。

繰り返し書かれていることですが、中国と呼ばれている地域の一番の問題は、人口が多すぎることです。
私も普段「日本の10倍の人びとが、日本国土の30倍の土地に住んでいるんだ。一言で中国なんて言えない」と周りに言っていて、頭では判っているつもりでしたが、本書の省単位での人口と世界各国の人口を比較したグラフを見て、あーまだこれが感覚として分かっていなかったなと思いました。
共産党中央部の統制が取れておらず、人民解放軍が各軍区毎に中央部を無視して好き勝手やっている、というのは何となく感じていました。
が、各省から下部の村とか町単位まで行くと、完全に野放し状態だそうで…確かにあれだけ広い土地と過剰な人口をどうやって統率してるだろうと不思議でしたが…要は統率なんかできていなくて野放し状態で好き勝手できるから、逆説的にほどほどに中央のいうことを聞いたふりして従っているふりをしているだけらしい。
そういう危うい状態だから、歴代の王朝は繁栄しても長続きせずに滅びる。で、新たに統一王朝が同じ体制を引き継いで興り、繁栄→滅亡を繰り返すと。
現在の共産党政府も、そういう危うい状態ではあるものの、人民にとっては経済発展で都合のいい方が(今のところは)多いので、共産党独裁でも今のままの方でよいと思われていて、人民が反乱革命を起こす気配は当面ないらしい。
でも郡部が独走しているのは…先日の全人民大会で習主席が永久に君臨することになったので、軍幹部ももう諦め状態のような気はします。
#だから三瓶が慌てて訪問して頭を上げたんだろうなと。

現代の中国(と呼ばれている地域)には、日本の暴力団のような組織はないそうなのですが、(もちろん犯罪組織はあるけれども永続的な組織はないそうで)、何故かというと共産党自体が黒社会組織だから、それに対抗するような組織は潰されるからだとか。
実際、共産党の起こりは、(分裂していた)中華民国政府と大陸に展開していた日本陸軍に、対抗するゲリラ組織で、反社会組織だから、成り立ちはそうなるんですよね。
今でも政府そのものが犯罪組織みたいなのは、変わってないし。

分裂して内戦になったら、日本はどうなってしまうんだろうか。