2022年2月26日土曜日

炯眼に候 / 木下 昌輝

織田信長を周りの人達からの視点で描いた短編集です。
木下氏はこれまでの作品でも、史実をきちんと踏まえた上で、未だに謎とされている事柄をうまく(フィクションとして)謎解きをして、実際にそうだったのかもと読む人を信じ込ませるような素晴らしいアイデアで、読者を魅了する技に長けています。

解説の天野氏が題名は作者のことだと、うまい指摘をされていますが、まさにそんな感じですね。

色々とこの短編集の素晴らしいところを上げたい思いもありますが、ネタバレになっては、これから読む方の楽しみを奪ってしまいますので、読んでのお楽しみということで。
時代劇が好きな方には、必読の書です。

 

源平の怨霊 小余綾俊輔の最終講義 / 高田 崇史

なぜそんなことをしたのか?
歴史の中では、不思議に思うことが色々とあります。
が、資料至上主義の現代日本の歴史学では、説明になってない説明でスルーしてしまっていることが多々あります。
本書の主人公は、それをスルーできずに真面目に研究を進めようとしたために、歴史学会からはみ出してしまった学者の物語ですね。

なぜ清盛が頼朝や義経を殺さなかったのか?
なぜ平氏である北条氏が、頼朝を助けたのか?

こういう基本的なことに対して、明確な理由を挙げている書は、私には本書が初めてです。
共産党の洗脳を受けた日本の学者さん達は、現代の常識で過去を考えるから、怨霊信仰や血統主義が理解できないんでしょうね。