2004年9月11日土曜日

一心剣

徳間文庫刊 田中 光二 著
田中光二氏というと、初期の頃のハードSFを思い浮かべてしまうのです。近年は冒険小説の方に力を入れられていて、SF作品がないのが非常に寂しいです。
本作は、時代小説です。豊臣政権から徳川政権に移りつつある頃を背景にしており、ちょっとだけSFの香りが巻かれています。
徳間文庫書き下ろしということなのですが、終わり方が中途半端なので、まだまだ続くのでしょうか。是非続きが読みたい作品です。

2004年9月10日金曜日

熱波

ハルキ文庫刊 今野 敏 著
沖縄の民族問題をテーマにした小説です。
沖縄にしろ北海道にしろ、少数民族問題を政府に正しく認識させることから始めないと、本当の意味での解決にならないことがよく判ります。
けどここで取り上げられている問題の本質は、民族問題というよりは、日本人が欧米に感化されて金の亡者になりはててしまったことが原因なのでしょうね。
お宝鑑定団というTV番組がありますが、あれを見るたびに今の日本人の心がいかに貧しいか、はっきりと判ります。お宝の価値なんて、金に換算できないからお宝なんであって、百万だから価値がある、千円だから価値がないなんてもんじゃないんだけどねぇ。


2004年9月7日火曜日

グーテンベルグ聖書奪回作戦

ハルキ文庫刊 柘植 久慶 著
実戦を語れる作家というと日本では柘植氏が第一人者でしょう。
本作も経験豊富な柘植氏ならではのストーリです。面白さは抜群で、一気に読んでしまいました。
ところで前回、柘植氏は伊賀忍者の末裔ではないかと書きましたが、尾張徳川家の甲賀忍者、御側足軽二十一家の中に柘植という家があるそうです。氏は名古屋出身ですから、見事に符丁します。


2004年9月6日月曜日

壬申の乱の謎 古代史最大の争乱の真相

PHP文庫刊 関 祐二 著
天武天皇の正体についての歴史研究書です。
天智・天武の両天皇は兄弟とされながら、日本書紀の記述からすると色々とおかしな点があります。
今日では天皇家は万世一系とされていますが、その中で何回か血統が替わっているのではないかという説もあり、天智と天武が兄弟というのは、実は別の血統の王位争いだったのを隠すために捏造された話だという説もあります。
本書では、日本書紀は藤原氏を正当化するために造られたという見解から、天武天皇の正体を暴きます。
私的には、今まで読んだ中で一番妥当ではないかと思える結論と説明でした。

2004年9月5日日曜日

【BMW雑記帳】M5のV10は贅沢だ!

BMW MAGAZINEの新号も出ています。まだ買ってませんが。
Motor Magazineがメルセデスベンツの特集の中で、M3と318i320iを比較のためにひっぱり出しています。面白そうなので買ってきましたが、なかなか面白い特集です。それにつけてもsmart roadstar欲しい。

んで、先週報告しましたAJのM5 V10解説記事を何度も読み返しているのですが、読めば読むほど贅沢なエンジンです。
何が贅沢って、エンジンブロックの開発と型製作には非常にお金が掛かるので、量産車のエンジンでは普通は色々な車種に使い回しするのですよね。BMWの場合でも、一つのブロックで排気量のバリエーションをいくつか変えたり、複数のシリーズに載せたり。これまでのMエンジンも、通常車種のエンジンブロックを流用して製作されていました。(初代M3のS14は専用設計の可能性もあるのですが、たぶん02の頃から使われている4気筒ブロックのはず)
ところが今度のM5用V10は全くの新規設計です。BMWでV10なんて、市販用では初めてですしね。それでも今度このブロックを使って、おとなしいバージョンのエンジンを量産して5シリーズとかに載せるのかなと思っていたのですが、どうもそれもなさそうです。
というのはですね、このブロックの鋳造はF1エンジンを製造している工場で行われているらしく、量産が効かない製造方法が採られているようなのです。また材質もシリコン17%のアルミ合金なのですが、これはシリンダーライナーが不要になる代わりに、エンジンの加工(シリンダー加工とかネジ穴開けたりとか)がもの凄く大変なのです。フェラーリやポルシェもこの材質でエンジンを鋳造していたのですが、両者とも1日に1桁台の製造しかしないので問題はありません。ポルシェは最近製造台数が増えているので、水冷化以降たぶんもうこの材質ではエンジンを造ってないと思います。
が、BMWが普通の5や6にもV10を乗せようとすると、この材質を使っていたのではとても需要を賄えるだけのエンジン製造は無理です。量産可能な材質に変えるとなると、恐らくブロックの設計も変える必要があり鋳造の型が共通では使えないので、結局は同じようなスペックの別エンジンになってしまいます。
次期M3はV8になるという噂ですが、これまでのM5用V8を流用するとは思えない(排気量が5L同士だとM5とかち合う)ので、恐らくそちらも専用設計のV8で4Lくらいになるのではないかと思います。
もうこうなるとM用のエンジンは、完全に採算を無視しているとしか思えません。ましてや新M5の欧州での販売価格は1,200万円くらいだそうですから。
本当にこのエンジンは凄いです!


三輪薫写真展「Rock」

於:京セラ・コンタックスサロン銀座
新幹線に乗って遙々東京まで行ってまいりました。まあ他にもちょっと用事があったので、それも兼ねてですが。
三輪氏の風景写真というと、日本の伝統的な四季折々の美しさを絶妙に表現した作品を思い浮かべるのですが、今回は海外の風景を撮影した作品による展示会です。
色がいつもの日本の風景写真と違って、派手で原色が強いものが多かったので、それについてお尋ねすると「これでも色は引き算してるんだよ。実際はもっと派手なんだ」ということで、日本と海外(主にオーストラリア)では、元々の色が全く異なることそうです。
私はまだオーストラリアには行ったことがなく、海外というと雨季直前の東南アジアとかくらいしか知らないのですが、空気の澄み方が全く違うそうで、同じ撮り方をしてもこういう色は日本では絶対でないとのことです。
日本の風景しか知らないと、フィルターを目一杯使っていると思ってしまうような強烈な色なのですが、「カラーフィルターはおろか偏光フィルターすら使ってない。Pフィルターだけ」ということで、自然の色をそのまま記録していて、一部は長時間露光によるフィルムの特性によるものがあるとのことでした。
先生の写真を拝見し、それぞれの作品の撮影した状況や撮影の意図の説明を戴く度に、自分がまだまだ甘い撮り方しかしていないことを思い知らされます。