2016年8月11日木曜日

倉山満が読み解く 太平記の時代―最強の日本人論・逞しい室町の人々 / 倉山満



後醍醐天皇を主人公とする太平記の時代は、意外と時代劇や小説には題材に余り取り上げられていないのですよね。
時代的にはそれ程年数は多くないですが、密度が濃く、まともに大河ドラマで描こうとすると回数が全然足りないそうで。
(それでも一度取り上げられていますが…私は観ていないんですよね)
後醍醐天皇の我が儘振りは知っていましたが、足利尊氏のことがよく分からなかったのです。
何故かを本書を読んで分かったような気がします。
かなりの躁鬱症で、歴史の表に出て来たと思ったら引っ込んで隠棲してしまうということを繰り返していて、むしろ弟の直義や家老の高師直が全面に出続けていて、尊氏の行動がよく判らんせいらしいですね。
尊氏という人はかなりお人好しだったらしく、そのせいで朝廷が南北に分断されたり、幕府も京都と鎌倉に分かれてしまったりしてるんですが、鎌倉府を設けたのは元々後醍醐天皇であることを初めて知りました。
今まで読んだものだと、南朝から目が離せないから将軍は京都から離れられず、かといって武家の本拠地になってしまっている鎌倉も押さえておかねばならないことから、鎌倉にも公方を置くことになったという説明を聞いていたのですが、それは既に後醍醐天皇が鎌倉幕府を倒して親政を始めた時からだったんですね。
#おまけに東北にも鎮守府として、自分の息子を東北公方として据えているし。
何にしても、この時代は本当にめちゃくちゃですね。
1冊ではとても書ききれず、本書は数冊の連載形式になるそうです。

2016年8月7日日曜日

はなとゆめ / 冲方丁



清少納言が自身の半生を独白する形式で書かれた小説です。
冲方氏がこういうものを題材に選ぶというのは意外でしたが、紫式部に比べると影の薄い清少納言を選んだという点ではらしいと言えるでしょうけど。
源氏物語が世界最古の小説であると同時に、枕草子は恐らく世界最古のコラム集とも言える存在で、どちらも女性の手による文化的な文筆作品という点では、圧倒的に古くて恐らくこの点でも世界最古です。
当時の宮廷政治に女官達が重要な役割を果たしていることが描かれていますが、女性が政治に関わるというのは、他の国では近代に入るまで例がないんじゃないかと思います。
平安文化というものが、どれ程優れており先進的なものだったかを、今の日本の歴史の授業では全くといっていい程無視しており、共産党かぶれの日教組により貴族による人民の弾圧と搾取という大陸での常識をそのまま日本に当てはめて否定する無知振りです。
本書は当時の詩(ウタ)というものが、(中高生が古典で教わるような表面的な薄っぺらな解釈では到底理解できない程に)どれ程に奥深いものであるかを教えてくれます。
そして宮廷の権力争いというものが、どれくらいに卑劣で見にくいものであるかも。