2021年8月26日木曜日

信長、天を堕とす / 木下昌輝 | 信長、天が誅する / 天野 純希

 

書店店頭にこの2冊が並んでいるのを見たときは、同じようなタイトルで作家が別の小説を同時に発刊ってなんだ?と不思議に思ったのですが、その後に雑誌の紹介で小説雑誌の企画で創作されたとのことで、ならば2冊とも読まないと駄目だなと思い、両方を買って読んでみました。

木下氏の方は、これまでの題材となる人物を描くのに、周辺の人物を主人公にした短編を連作にして、周りから見た絵で、一人の人物を描くという手法を得意にしていますが、本作では逆に主題である信長が周りの人物を見ながらの思いを描くことで話を進めていっています。
天野氏が、それと対称に周りから見た信長を描いています。天野氏の作品は読んだことがないのですが、氏もこういう手法を得意にされているそうです。

両者が月ごとに変わりばんこで連載を続けるという形式だったそうですが、各章の登場人物の動きや台詞がキチンとシンクロしており、余程事前に両者で綿密に打ち合わせしてストーリーを組み立てていったのではないかと思わされる出来でした。
もう別々の作者が書いたと思えないくらいに、2冊が見事に咬み合っています。
絶対に2冊を合わせて読まないと駄目ですよ。

 

ヤマト政権と朝鮮半島 謎の古代外交史 / 武光 誠

以前にも氏の著書は読んでいると思うのですが、史実と自分の推測をあまり区別せずに書かれるので、この分は史実だろうか?著者の推定だろうか?と考えながら読まなきゃならないので、読み解くのに時間が掛かってしまいます。

内容的には非常に興味深いものなのですが、その辺りをもうちょっと整理して書いて戴けるといいのになぁ。
このままだと、史実の部分を引用したくともできないんですよね。

いずれにしても古代日本政権が、半島南部に対して強い影響力を持っていたことは間違いのない事実なのですが、任那とか日本府などは出鱈目だと言い張る方が依然多いのも事実。

 古代史は自分の勝手な解釈で勝手なことを言い放題な部分もあって、実際お偉い学者さん達がトンでも説を真実として学会の定説としていたのが、後の研究でひっくり返った例は数多ありますしね。