2019年10月2日水曜日

ドナ・ビボラの爪 (上)帰蝶純愛篇 (下)光秀死闘篇 / 宮本 昌孝




宮本氏の小説は久しぶりですが、相変わらずの面白さです。
分厚い文庫上下2冊で、読み切るのに結構時間が掛かりました。
読むペースは遅かったわけではないのですが、何しろページ数が半端ないので。

上巻と下巻で主人公が入れ替わります。
サブタイトルにあるとおり、上巻が帰蝶で、下巻が明智光秀です。
斎藤道三の娘で、織田信長の正室と伝えられている帰蝶ですが、実在がはっきりしないのですよね。
婚姻を結んだとはいえ婚約だけで、実際に信長の元へは嫁がなかったのではないかという説もあれば、架空の存在とする説もあります。
何しろ、信長の元に入った記録や、亡くなった記録がないそうなので。
その辺りを、本作では上手く理由付けていると思います。

明智光秀の本能寺の変についても、本書の中では上手く理由付けがされており、素直に納得ができます。
とはいえ、鍵になる人物が完全に宮本氏の創作なので、実際にそうであったということではないんですけどね。

いずれにしろ、宮本氏の史実を上手く使って話を仕立て上げる創作力と、読みやすく分かりやすい文章力は、感服します。