2016年9月2日金曜日

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 / 小林 雅一



ゲノム編集の原理とかはあまり書かれていなくて、経済的にどのくらい世の中にインパクトがあるか、という話が大半でした。
原理も書かれてますが、その原理が実はかなり簡単な仕組みなので、ページの割きようがなかったというのもあるのかなぁ。
実際、ゲノム編集の原理部分を読んで、その簡単さに目が点になりましたよ。
元々ある種の細菌が持っていた機能を取り出して、若干の改変するだけでできてしまうという。
しかも狙いとなるDNAシーケンスと対になるマーカーを付けるので、ほぼ間違いないターゲットのDNAシーケンスを編集できる。
ただ、これは実は切り取りだけで、切り取った部分に改変するDNAシーケンスを入れ込む原理が、かなりサラッとしか書かれていなくて、本当にそんなのでできるのか?と思う部分でもあるんですが。

少し前から農作物の種子などが、(遺伝子組み換えではなく)ゲノム編集されたものが出て来ており、各国の遺伝子組み換え品に対する規制対象外になっていて、ゲノム編集されたものをそれと知らずに食べている可能性も指摘されて来ています。
遺伝子組み換え品はDNA検査を行えばすぐに分かるのですが、ゲノム編集の場合だとまず分からないと言われているのですが、本書で読んだ原理からすると余程大量な編集を行わない限りは、検査しても自然な交配での品種改良と区別を付けるのはまず不可能でしょうね。
一番期待されているのが、遺伝性の病気や遺伝子異常、染色体異常による病気の治療だそうです。
まだまだ先の話にはなるのでしょうけど、癌やHIVの治療については、臨床実験も始まっているようなので、注射一本で完治できる日はそう遠くないのかも知れません。

ヒッグス粒子の謎 / 浅井祥仁



4年程前に発刊になっている本なのですが、何故か書店の新書コーナーで平積みにされていて、てっきり最近発刊になったものと勘違いして買いましたが、まだ読んでいない書籍でよかったです(苦笑)
著者はCERNのLHCで、実際に実験をされているそうで、ヒッグス粒子について、分かりやすく書かれています。
先端の科学者でも、まだヒッグス粒子の正体を見つけられたわけではないので、結局のところ題名の謎は謎のままですが…陰くらいは見えたのかな?
ヒッグス粒子が発見されたとはいえ、これまでの標準理論からすると測定された質量が、予測よりもかなり軽いので、何故に予測よりも軽いのかを調べて、標準理論の修正が必要なのですよね。

ヒッグス粒子が粒子に質量を与える仕組みとして、粒子に1/2スピンを与えるためだと考えられています。
が、では何故スピンが1/2だと質量が生じて、1や0だと質量がないのか、一応書かれているのですが、イマイチよくわかりまえん(笑
まあ、読んでみてください。

2016年9月1日木曜日

【くるまのおと】雨の日は空気抵抗が倍になる



今週のベストカーで、水野氏がBENZ Eクラスの評価を行っています。
最新のCとEは基本設計を共有していて、空力設計も設計を共有し、両方とも優れた空力特性を実現しているそうです。
Cクラスはゼロ・リフトを実現し、Eクラスはマイナス・リフトを実現するという、セダンでは滅多に聞かない空力特性です。

で、水野氏によると雨の日は水分が空気に含まれるため、空気が重くなり、そのため同じ速度だと空気抵抗が倍になるのだとか。
同時にプラス・リフト(揚力)も倍になると。
今まで雨の日の高速走行で、ステアリングが軽くなり手応えがなくなるのは、雨でタイヤと路面の摩擦抵抗が減るせいだと思っていましたが、実は空気抵抗が増えてフロント・リフトが増えて、フロントが空気抵抗で持ち上げられるからということだったんですね。
そう考えると、安全性のためにはフロント・リフトを減らし、可能であればマイナスにするのは、独逸のように高速でかっ飛ばす国では特に、絶対的に必要なことなんだなと。

2016年8月30日火曜日

水軍遙かなり / 加藤 廣





九鬼水軍の最後将の生涯を描いた物語です。
九鬼水軍というと、源義経に合力し、瀬戸内海での海戦で平氏の水軍を打ち破ったのと、織田信長が石山を攻めるときに鉄鋼船で村上水軍を撃破したことが有名です。
本書の主人公は、後者の鉄鋼船を建造した九鬼嘉隆の子息です。
嘉隆は九鬼家の傍系で、本家の跡取りが幼いときに主権を握り、本家を立てつつも九鬼水軍の主流を奪い取ってるんですね。
そして織田信長に重用されるものの、豊臣政権では水軍の主力を担えず、徳川政権になってからは秀忠に嫌われて、最後は断絶する。
江戸時代の平和には、水軍は不要となり、海外への渡航も禁止され、船を操る技術は廃れていくのですから、仕方がないのかも知れません。
村上水軍傘下の海の民達は、瀬戸内の漁業と海運を握り、明治まで生き延びたようですが、鳥羽ではそうならなかった。