2021年6月9日水曜日

世界はゴ冗談 / 筒井 康隆

 大学の時に先輩に「筒井康隆の本を10冊読んだら気が狂うというぞ」と言われたことがあります。
確かにこの不条理極まりない世界を描く論理が微妙にずれて狂気をまき散らしている文章に填まり込んだら気が狂うよな。

まあこれだけ不条理なことを書けるのも、書いている本人が極めてまともからこそですが。

因みに筒井氏がキチガイという噂の元は、ジャズ・ピアニストの山下氏だそうで(本人談)、筒井氏は趣味でドラムを叩かれるのですが、その腕前は完全に一流のプロクラスだそうで、山下氏も何度かセッションをしているそうです。
で、ジャズの世界では凄い演奏すると「キチガイやな(英語の"You’re crazy!"の直訳)」というのが普通なのですが、山下氏が雑誌の編集者に「筒井さんがキチガイって本当ですか?」と聞かれて「もちろんです!」と元気よく答えたのを本気にされたらしいそうで。

でもまあ、この文章を読んだら、書いた人がまともとは思えなくなるのも事実。
ちゃんと読めば、正真正銘まともだからこそ不条理な世界が描けるということに気が付くと思うんですが、それを気づけるだけの理性の持ち主がこの世には殆どいないってことかもね。


オーバーロードの街 / 神林 長平

オーバーロード = Over Lord = 超越的存在 = 神、となるのですが、本作でのオーバーロードとは何物か。

地球に人類が増え過ぎたため、地球の意思が人類を粛正するというストーリーは、小説だけでなく科学的な仮説でも出ることがありますが、神林的オーバーロードとは如何なるものか。

途中までの展開は、文体は神林節なのですが、機龍警察っぽい月村了衛氏が書きそうな雰囲気です。
神林氏の文章って、結構説明が細かくて理解するのに時間が掛かって、ページを捲る手が遅くなりがちです。
結構、すんなりと理解できるシーンがないのが難点で…全体のストーリーは面白いから昔から氏の作品で未読のものを見つけると速攻で購入して読んでいるのですが…未だにちゃんと理解して読めている気がしないです(苦笑