2023年6月18日日曜日

唐―東ユーラシアの大帝国 / 森部 豊

かなりの力作です。
古代大陸国家の唐というと、律令制が整った素晴らしい国というイメージがあるのですが、その内実はというとかなりはちゃめちゃですね。
周辺の騎馬民族と常に対峙しながら、広大な領地を統治するというのは、交通機関が馬くらいしかない古代においては、大変な難関だったことが分かります。
反乱を起こす地方の騎馬民族との戦い、中央に送るべき租税の米をチョロまかして私腹を肥やす役人の処分、皇帝の世継ぎで権力争いをする内宮、などなど問題山積みですな。

周辺の騎馬民族に、日本人の苗字と同じ音の姓を称する部族が、幾つかいるんですね。
これを読んで知りましたが、日本海を挟んで交易をしていた間で、そのような関係があるとは。
本書では特に触れられていませんが、読みながら私は、騎馬民族に一部が日本に流れてきて、地方豪族や武士になったのでは?と思ってしまいました。

更には、唐に反乱を起こして、独立国を称した人の中に、皇帝ではなく天皇を称した人がいるのだとか。
天武天皇が「天皇」を名乗った最初ではないかと言われていますが、年代的に考えると、大陸の反乱国家からパクったとしてもおかしくないです。

 

天武天皇 / 寺西貞弘

天武天皇は、謎の多い方で、「逆説の日本史」でも指摘されていましたが、日本書紀に生年が記載されていなくて、年齢不詳状態なのです。
逆説の日本史では、天智天皇より年上の庶子だったためでは?という推測をされています。
本書では、皇子の生年から推測して、天智天皇より10歳前後年下だったのでは?という推測をされています。

本書は、天武天皇の生い立ちとか正体を暴くみたいなものではなく、天武天皇が推し進めようとした律令政治への転換について、資料を紐解き読み砕き解明されています。
大陸の律令制度を取り入れようとしたのは、天智天皇が皇太子だった時代からというのが定説だと私は思ってますが、本書では皇太弟だった天武天皇が天智天皇時代から推し進めてきた、という説を唱えられています。

本書を読むと、律令制度がどのように変換して来たか、当時の人達が法治というものを導入するのに辺り、どのような苦労があったのかがよくわかります。
それ以前は、豪族による人治で、各地方(国)をその地の豪族が治めていたわけですが、天武天皇はその領地の支配権を巧みに奪い、朝廷の役人による統治に変えていったとのこと。
言われてみれば確かにそこは重要なポイントなのですが、今までその視点から律令制度や国司派遣などを解説した歴史学者は皆無だったのではないかと思ってしまいました。


宇宙最強物質決定戦 / 高水 裕一

子供向けの科学読本とかなら、こういうノリもええかとは思いますが、新書でやられるとなぁ。
ホーキンス博士に教えを受けたことある方だそうですが、期待はずれでした。

 まあこの手の知識がない方には、入り込めやすくて、入門書としてはいいかも知れませんが。

 

日本にやって来たユダヤ人の古代史 / 田中 英道

日ユ同祖論というのが割と古くからあり、古代ユダヤ人が日本列島に流れ着いて、今の日本の基を築いたとする説です。
本書では、同祖ではなく、古代日本人に来日したユダヤ人が溶け込んで同化した、という説を取られています。
日本文化や日本語の中に、ユダヤ文化の痕跡が見られることは、今では広く知られていることですが、いつどこからそれがもたらされたのかは、まだ諸説紛糾状態だと思います。
本書の説が日本の歴史界に認められる日は、来ることがあるでしょうか。