2006年3月12日日曜日

【BMW雑記帳】三菱i

福野氏が昨年の東京モーターショーのレポート誌を発刊していますが、その中で一番の収穫として取り上げているのが、三菱の「i」でした。とはいえ、これのカットモデルが展示されていなければ、福野氏も見落としていたと思いますし、私も福野氏のレポートを読まなければ全然気がつかなかったと思います。
この車は凄いです。画期的です。ビートル、ミニとベンツAクラスに匹敵するプラットフォーム革命です。
20年くらい前に本田が"Man maximum, Mechine minimun"という思想を掲げていたことがありますが、この「機械を最小にして人の居住空間を最大に」という思想を実現したのは、RR形式のビートルが最初といっていいでしょう。その後ミニがFFでこれを実現し、現在の小型乗用車のほとんどはミニのコピーです。ベンツのAクラスはまだ真似されていないですが、これからのミニバンはどれもAクラスのコピーになっていくのではないかと思います。


で、iですが、軽量小型エンジンを斜めに傾けてリアアクスル直前に搭載して、メカが占める体積を最小にしたレイアウトは俊逸ですね。
ビートルでは当時信頼性の低くコストの高かった水冷エンジンを避けたため、強制空冷水平対向エンジンをリアに置くしかありませんでした。iと同じ場所に置くと、熱で後部座席が焼けてしまうし、そもそも冷却用の空気が流れませんから。
今では水冷で信頼性は確保できる(というか、逆に水冷でなければ信頼性も排気ガスの清浄性も確保できない)ので、エンジンを空気の通りのよい場所に置く必要はありません。ラジエタさえ空気が流れる場所に置けばいいですからね。
また加工精度が向上したことで、エンジンのブロックやギア類等などはギリギリの肉厚でも十分に強度と耐久性が確保できるようになっていることで、リアシート下に置けるくらい小型化できます。
現在だから実現可能なレイアウトなのですが、この構造を実現するとなると、既存のプラットフォームやエンジン周りは全部新規に作り直さなければなりません。つまり設備投資が膨大になります。
それでもこれからの車作りを考えて決断をした三菱は凄いと思います。リコール隠し問題で会社が危うい状況故に、起死回生の大決断ができたのだと思いますが、もしそうだとするならば、会社の調子がよければ世に出てこなかったパッケージなのかもしれません。
対して我らがBMWのパッケージデザインはどうかというと、まずFRありきのデザインです。一番に走りの気持ちよさがあり、走行性能があり、それから居住性という優先度になっていると思われます。いや、4名乗車を実現しつつスポーツ走行性能もということなので、どちらも優先度は同じなのかもしれません。走りに優先度を与えれば、居住性は二の次になって、フェラーリとかランボルギニみたいになるでしょうから。
4名乗車とスポーツ性能を両立させようとして、ポルシェはRRレイアウトを採用したのですが、排気量が拡大してくるとかなり無理があります。ポルシェも一時期はFRに移行しようとしたのですが、RRイメージが確立されてしまっていてユーザーが許してくれなかったのは、ポルシェにとってよいことだったのか悪いことだったのか。独特のRRレイアウトによって、ポルシェは他とは一線を画す孤高の存在でいられるのですから、結果的にはよいことだったのでしょう。
BMWはFRでありながら、4つのタイヤを思いっきりボディの前後に配し、エンジンをフロントトランスアクスル後方に載せ、所謂フロントミッドシップと呼ばれるパッケージを実現しました。これによりミッションをデフと一体化する必要もなく、運動性能と居住性とコストダウンを両立ならぬ三立させているのです。
BMWの方程式は走りの気持ちよさが解であり、エンジンも直列6気筒に拘るのも、V6では気持ちのいいエンジンが実現できないからです。気持ちのよい直列6気筒は、長さと重さがV6に劣ります。長さはボアピッチを限界まで詰めることで少しでも短くする努力をしており、軽さはアルミ化に続いてマグネシウム化することで軽量化を実現しています。今や風前の灯火となった感のある直列6気筒ですが、BMWはきっといつまでもその火を守り続けることでしょう。
でも私は4気筒が好きですけどね。

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