2006年12月11日月曜日

黎明に叛くもの / 宇月原 晴明



異才宇月原氏が今回取り上げたのは、信長に何度も反逆した挙げ句、名器平蜘蛛の茶釜と共に爆死した松永弾正久秀です。
松永久秀という人は、東大寺の大仏を焼き、長年使えた主を殺し、将軍を殺しと、悪逆を尽くした人なのですが、何故か信長には気に入られていたようです。
現在、日本の城というと天守閣があるものを思い浮かべますが、この天守閣というのは松永久秀の発想で、久秀が築城した多聞城と信貴山城(2つは同時に築城された)が世界初の天守閣を中心とした城郭になります。
安土城、大阪城、更にはそれ以降の日本の城は、全てこの多聞城のコピーと言っても過言ではありません。
しかしその松永弾正を取り上げた歴史物語はあまりありません。残っている資料が少なくて書きにくいのか、悪逆非道の行いに対して、茶の湯や城郭の発想などが相反するため、描くべき人物像が見えにくいせいかなとも思います。
本作はその不可思議な人物を、不可思議な世界観で描き、理不尽さが実は本当なのかと思わせられてしまうことに成功しています。これも元々松永久秀という人が、それだけ不可思議な人物であったからでしょうが、宇月原氏の独特の世界観には引き込まれてしまいます。


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