2010年6月11日金曜日

天地人 / 火坂雅志



大人気になったNHKの大河ドラマの原作です。
文庫本が発刊されたので、今頃ですが読みました。
主人公の直江兼続は、豊臣秀吉から再三に渡り「上杉を離れて、儂の直臣になれ」と誘いを掛けられ、それが叶わないと上杉氏とは別に米沢三十万石を兼続に与えたとか、その才の凄さを称える故事が、戦国時代の小説を読むと必ずと言っていい程出て来ます。
でもこうやって主人公に取り上げた小説は、あまりなかったと思います。上杉謙信なら数多の小説がありますが、後を継いだ景勝も目立たない武将で、小説の主人公に取り上げられることは少ないですしね。
たぶん、謙信亡き後の上杉氏の活躍というか、合戦に参加する場面が少なかったため、小説として取り上げても見せ場が少ないというのがあるのかも知れません。謙信亡き後の上杉軍団は、その強さを相変わらず保ち続けていると周りに思われていて、上杉に戦を仕掛けるよりも和睦に持ち込む方が得策と判断されていたから合戦になることが少なかったようです。
本作でも合戦の場面よりも駆け引きの場面の方が多いですし、そういう時には寡黙な景勝は引っ込んだままで兼続の独壇場になっているので、作者の兼続贔屓を除いても景勝という人は小説の題材にしにくい人に思えます。
その景勝と上杉家を生涯支え続け、領民の生活を第一に考え経済発展に尽くした、その才と生き様は、漢として憬れる理想の武将と言えましょう。
戦後の日本の政治家に、これだけの心意気のある人が出て来ないのが寂しいですよ。


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