2018年2月18日日曜日

感染領域 / くろき すがや



【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」優秀賞受賞作】だそうですが、賞を取るだけあって非常によく練られたプロットと文章運びは非常によくできていて、あっという間に読み終えてしまいました。
作者は、美術系ライターと広告営業の二名の共作ユニットだそうで、小説では珍しいですね。
漫画とかだと原作と作画は別というのは結構ありますし、作画も何人ものアシスタントを使ったチームワークなのが普通ですが、小説の場合は編集者と作家の二人三脚というのはありますが、作家として複数名でチームを組むということは例がないと思います。
#亡くなった作家の執筆中作品を、別の作家が仕上げるという例はありますが、元々意図したものではないからね。

遺伝子操作がテーマなのですが、SFとはいえ、ここで行われたことは、既に実際に実行可能な話です。
農作物に対するウィルステロは、実際に実行可能で、今すぐにでも起こりうる話なので、フィクションながら、これ洒落にならんぞ、と思いますよ。

主人公は嘗て大学研究室で行われた実験データ捏造を告発したために、大学の閑職に甘んじているという設定になっています。
捏造を告発するのは正しいことで、褒められるべき行為のはずですが、日本では「裏切り者」の烙印を押されて、捏造した研究者よりも非難されるのです。
大学研究だけではなく、企業内の行為でも同じで、そういう日本的な慣習から、不正が長い間放置され社内慣習として定着してしまう。
出荷製品の性能データ捏造、検査データ不正が、複数の会社で発覚していますが、日本人の道徳観は「仲間内を何よりも優先する」であり、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」なので、周りが不正を行うなら一緒に不正を行うのは、不正ではなくなるのです。
そういう体質自体を変えなければ、いくら政府が働き方改革とか、賃金向上を訴えても、絵に描いた餅でしかないんですよ。

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