特選外車総情報CHARGEという雑誌が「BMWチューニング最前線」という特集をしています。個人的にはちょっと突っ込みが足らないような気がするのですが、まあこんなもんでしょう。BREYTONチューンのE36tiが掲載されています。
さてちょっとリクエストが来たので、今回はベンツについて述べさせて戴きます。とは言え、前々から書いているとおり、私はベンツには乗ったことがないので、車自体がどうこう言う気はありません。
「よくメルセデスの事褒めてますよね?何処が良いのか等が聞きたいです」
という質問が来たのですが、私がベンツがいいというのは車自体がいい悪いという話ではないです。ベンツの「Das Beste oder nicht」という哲学と、それを実践し続ける企業としての態度が素晴らしいということです。
「最善か無か」と訳されるこのベンツの企業哲学は、ベンツの製品というよりも商品に関する考え方を的確に表しているわけです。とはいえ、最近は消費者に迎合しコスト優先で作られ来ていて、必ずしも当てはまらないという声もありますけど。
具体的にどういう部分に現れているかというと、最新技術の導入なんかがそうではないかと思います。ベンツはエンジンの電子制御の導入は、世界でももっとも遅かったのですが、これは電子制御という物の信頼性が人の命を預けるに足るだけのレベルにはまだない、という判断から遅れたわけです。だからといって、ベンツの技術者がただ電子制御に対して嫌悪感を抱いていただけではないことは、ベンツ初の電子制御システムを見れば一目瞭然で、Sクラスに採用された電子制御システムは一気に世界のトップレベルに躍り出て、当時もっとも進んだエンジン電子制御システムを誇っていた日本企業の技術を時代遅れのものにしてしまったのです。
それは当然電子制御技術の長年に渡る研究開発と膨大な量の実験を繰り返さなければ不可能なことです。安易に新技術を導入して、消費者を実験台にするような日本車メーカーとは全く違う態度です。私は当時電子回路の設計で生計を立てていましたが、このSクラスに採用されたベンツ初の電子制御システムの雑誌記事を見たときには、本当に唖然としました。Sクラスのような高級車だから、あのようなコストを度外視したシステムを導入できるということはありますが、電子制御の開発を行っている技術者なら誰もが本当はやりたいがコストや生産性を考えて採用できないシステムを、当たり前のように採用したことを見たときは、心の底からベンツの技術者が羨ましかったです。例えどんなにコストが掛かろうと、人の命よりも高いものはない、というごく当たり前のことが日本のメーカーにはできないのです。
ここ数年、日本の企業で色々と不祥事が露見し、消費者不在の製品販売を行っていることが問題になっています。価格のみを重要視する消費者にも問題はありますが、本当に必要なことはなにかを考えているかどうか、というのはコストに大幅に跳ね返る割に、消費者に対するアピールがほとんどありません。本当に必要なもの、不必要なのにやたらと気にするもの、それを我々消費者がしっかりと見極め、日本の企業がベンツのような確固たる理念の元に、製品造りをできる国になって欲しいものです。
ドイツという国はそういう意味では、しっかりとした国だと思います。ドイツ製品が愛好される時、その製品に込められた企業哲学、理念、思想が愛好されるのです。そういう意味で、BMWユーザーの皆さんには、しっかりとBMW技術者からの思想を、車を通じて感じ取って欲しいと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿