講談社刊 帚木 蓬生 著
1992年の作品なので、14年前の作品ということになりますね。まだ南アフリカ共和国がアパルトヘイト政策を取っていた頃の作品です。
帚木氏の作品は初めてなのですが、読みやすく流暢な文章と、軽快で息つく暇を与えないストーリ展開で、自分でももうこんなに読み進んだのか?と驚くくらいに、あっという間に読んでしまいました。
WHOが絶滅宣言をした天然痘が、兵器として使われるという小説は多いですが、それだけ天然痘という病気は確実に大量殺戮に向いているのでしょうね。
この頃の南アフリカ共和国というと思い出すのが、南ア製のBMWです。
BMWはノックダウン工場を南アフリカに置いていて主に南アで販売していたのですが、右ハンドルかつ低価格であることに目を付けた業者が日本へ並行輸入して格安BMWとして売り出したのです。バブル期のまっただ中で、BMWが大人気だった日本で、これが売れました。
それに対して、CG誌に広告を出していた別の輸入業者が批判広告を出したのです。
曰く、
・南ア製のBMWが安いのは、アパルトヘイト政策下の極低賃金の黒人の手で作られているからだ。
・それを輸入して売るというのは、その南アのアパルトヘイト政策を支援していることと同じである。
・そのような業者はもちろん、その広告を載せたCG誌も許せない。
・CG誌への抗議の意味を込めて、我が社は今後一切CG誌に広告を掲載しない。
そして実際にその業者は、CG誌には広告を載せるのを止めました。
当時、CG誌に広告を載せると面白いように車が売れた時にです。
この業者さんの広告はいつもイメージ広告で、自社のポリシーを説明する広告ばかりで、通常の中古車や並行輸入の業者とは一線を画していましたが、この広告を読んだ時には素晴らしいと思いましたね。
世の中のほとんどの業者が売れて儲かれば何でもいいという中で、商品は車ではなく自分達の信念と誇りということですから。
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