2006年5月23日火曜日

小説 上杉鷹山 (上・下)



今でこそ、上杉鷹山の名は経営者の鑑として経営書などに頻繁に登場しますが、日本でその名が広まったのは割と最近のことのようです。大戦直後くらいには、日本ではほとんど忘れ去られており、むしろアメリカで有名だったようですね。
九州の小藩から、名門上杉家へ婿養子に入り、格式張った上杉家の伝統をぶち壊して、藩経営の改革に望むのですが、旧来の慣習と既得権にしがみ付く家臣達に阻まれ何度も挫折しかけます。
しかし、最終的に改革を成功させるわけですが、単に藩財政を持ち直しただけではなく、この封建的な時代において「藩民のための藩政府であって、藩政府のための藩民ではない」という革命的で革新的な考えを、藩全体に浸透させるのですから、天才の域を完全に超えていますね。
ちなみにこの民主主義の原点と言うべき考え方は、当時欧米でもまだろくに論じられていなかったので、世界最初の民主主義思想家といってもよいかもしれません。


本書を読んで、この人が経営のノウハウ本に改革の手本として、頻繁に登場する理由がよく判りました。が、鷹山という人が凄すぎて参考にはならないと思います。
自らをここまで潔斎して改革を引っ張るだけの高尚な理念を持っていたら、まず間違いなく今の世では経営に携わる立場に立つところまでは行きませんよ。その前に煙たがられて潰されますからね。
身分制度がなくなって、実力主義になっても、派閥と既得権を保とうとする人はいなくならないわけで。

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