2007年4月10日火曜日

覇者 信濃戦雲録 / 井沢 元彦



野望の続編です。上巻で信玄が亡くなり、下巻は勝頼主体で物語が進みます。
野望もそうですが、本作はかなり史実に忠実に即しているようです。もちろん小説なので、作者の嘘が匠に織り込まれているわけですが、私ら素人には史実と虚構の区別が全く付けられません。虚構であろう部分も、綿密な資料に基づいた虚構のため、そのように思わされるのでしょうね。
野望/覇者は、信玄が上洛の意志を持って周りの国々を征服していく物語ですが、作者の井沢氏は「逆説の歴史」では、信玄は天下に号令するつもりはなかった、という説を採っていたはずで、自説と逆の小説を書いていることになります。
まあその逆説を小説にすることで、自分の説の正しさを確かめようとしたのか、この小説を書いていく間に「違うぞ」と感じたのか...。


ところでこの大作で繰り返し述べられていることは、侍大将は戦術が優れていればよいが、国主は軍略に優れていなければならない、ということです。
この区別が日本人は歴史的に苦手で、唯一戦国時代の大名の幾人かに軍略の芽が出ていたくらいです。それも江戸時代になってしまった途端に、消え去ってしまうのですが。
今でも日本の政治が最低と言われる理由は簡単で、未だに戦略と戦術の違いが判る人が少ないからです。この違いが判らないため、目的と目標を取り違えることも多いし、手段が目的にすり替わっても気が付かないことも多いわけです。

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