2007年9月22日土曜日

【D3コラム】 フルサイズ(FX) VS APS-C(DX) その1

ニコンがやっとと言うべきかとうとうと言うべきか、35mmフルサイズ1眼レフ「D3」を発表しました。FXフォーマットと称するそうです。
同時にAPS-Cサイズ(Nikon DXフォーマット)の最高峰という「D300」も発表です。
FXとDXはそれぞれ特徴があり、単純にどちらが優れているとは言い難いものがありますが、私は断然フルサイズFXフォーマット派です。

FXの欠点と言えば、第一は高価格になる、ことに尽きますね。逆にいうとそれ以外はあまりないと思っています。
FXフォーマットが高価格になる理由は、CCDやCMOSセンサーを製造するための半導体製造装置が、本来はDXフォーマットのサイズ以上の半導体を製造することができないからです。
半導体は、回路パターンを高精度なフィルムに記録し、感光剤を塗布したシリコン結晶の薄板に、写真を焼き付けるようにしてパターンを写します。この写す装置を露光装置と言いますが、まあ写真プリントの焼き付け機の高精度なものと思って頂けばよいかと思います。
焼き付け機も種類によって、フィルムの大きさや写真用紙の大きさに限界があります。35mmフィルムで半切まで伸ばせる焼き付け機では、645フィルムで全紙にプリントすることはできません。
それと同様に、半導体製造用の露光装置は、APS-Cサイズの半導体までを製造できるものしか存在していないのです。理由はそれ以上大きな半導体というと、写真のCCD/CMOSセンサーくらいしかなく、FXフォーマットを焼ける露光装置を開発しても、開発コストが回収できないからです。

そのために、35mmフルサイズや中判サイズのセンサーを製造するときは、回路パターンのフィルムを複数に切り分けて、複数回に渡って焼き付けを行うということをしています。
先の写真の焼き付け機の例で言えば、645フィルムを3つくらいに切って、全紙の用紙をずらしながら3回に分けて部分部分を焼いていくという手順を行っているのです。
ちょっと考えれば判りますが、繋ぎ目を綺麗にピッタリと合わせるのが非常に大変です。このため回数が多ければ多い程失敗する確率が高くなりますから、コストが嵩むことになります。
その露光装置を開発しているのは、皆様ご存じのCarl Zeiss(現在はオランダの半導体メーカーと共同開発)、キヤノン、ニコンです。
35mmフルフォーマットのデジタルカメラを発売したのは、京セラ・コンタックが最初でしたが、これはフィリプスの半導体製造部門が独立した会社のCCDセンサーを使用していました。
このセンサーは3回の露光で製造されており、そのセンサーを使用して60万円という定価で発売したのは驚異的というか赤字覚悟の大盤振る舞いでした。が、カメラそのものの性能の低さ(AFなのにMFでピントを合わせる方が速い、RAW出力時には液晶に画面がでない)ことと、マウントを変更したのにレンズが揃っていないことなどで、売れませんでしたね。
これをY/Cマウントで出してくれていれば、私は無理してでも買ったと思いますけどね。
次にキヤノンが1Dsを発売しましたが、2回の露光で35mmフルサイズのCMOSセンサーを製造することに成功したため、発売にこぎ着けることができたのです。半導体露光装置もセンサーもキヤノンの自社製ですが、この露光装置は未だに外販をしている様子が見られません。少なくとも写真用のセンサーを製造しているメーカーには。
#Intelとかキヤノンと競合しない半導体メーカーには販売しているかも知れません。
5Dが比較的低価格でフルサイズを実現できたのも、この2回の露光による製造がこなれてきて、歩留まりがよくなったからでしょうね。
#どこぞの掲示板に1回の露光という書込があったのですが、キヤノンの技術者がインタビューで「2回。行程によっては1回で済ませられる部分もある」と答えていますので、露光自体は2回であることに間違いないと思われます。
KODAKもフルサイズセンサーを開発して、Nikonボディベースで発売していましたが、これは3回露光だったようです。
そして今回のニコンFXですが、1年程前からニコンが液浸露光という新しい技術を使った製造装置の開発に成功して販売を始めたという話が出てきていて、これを使えばフルサイズセンサー製造が2回露光で可能という噂でしたので、期待通りということになります。
キヤノンの遅れること約5年で、やっと追いついたと。
ちなみにD300のDXセンサーは、SONY製と思われます。D3/D300発表の2日前、キヤノンのD40/1DsMk3発表当日に、SONYがD300/α700に搭載されていると思われるCMOSセンサーを発表していますし、スペックから考えて間違いありません。D300とα700では、センサーのスペックが微妙に違っていますが、これは手ぶれ防止有無の差によって、有効に使える範囲がα700の方が狭くなっているためでしょう。
ちなみにSONYの半導体製造部門(カメラ部門とは別部隊です)は、ニコンの半導体製造装置を使用していますので、半年か1年後にはαのフルサイズが登場することになると予想されます。
あ〜、半導体製造装置のことだけで、一杯になってしまったので、続きはまた後日。

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