2013年12月16日月曜日

日本の歴史を読み直す(全) / 網野 善彦



1991年発刊の日本の歴史をよみなおす (ちくまプリマーブックス)と、1996年発刊の続・日本の歴史をよみなおす (ちくまプリマーブックス)の二冊を一冊の文庫本にまとめたものです。

旧家の倉や東寺などの古文書を詳しく読み解き判明したことを書かれています。
現代の日本人の常識が、古代から近世に掛けての日本の社会構造を完全に間違った解釈をしていることを指摘されています。
まあ目から鱗の連続ですわ。

逆説の日本史の第一巻で、江戸時代の日本の人口と石高からほとんどの人が年間を通じて米を食べていた、とする説が紹介されているのですが、この説に関しては私的に妙に違和感があったのです。
本書の続の方の内容を読んでいて、やはり先の説の前提となっている「各藩の石高=米の生産量」というのが間違いで、様々な生産物(海産物、塩、製鉄、紙などなど)の生産高を米の石高に換算している割合がかなり多いようで、実際の米の生産量と名目石高は全然一致していないようです。

また江戸時代の大坂の米市場で先物取引が世界に先駆けて発明されていた話が、逆説の日本史に出てくるのですが、本書では平安時代には既に手形決済が存在し、鎌倉時代後半には送金手形による地方から京への送金が頻繁になされていたことが示されています。
恐らくはこの手形の発明も世界に先駆けていると思いますが、平安時代から安土時代辺りに掛けての流通経済システムは、現代の流通経済システムに匹敵するくらいに発達していた可能性が高いですね。
#バブルな事象が発生した形跡がない分、昔の方が金融経済システムは優れていたかもね。

戦後の日本教育が、反天皇主義に凝り固まった共産主義思想で塗りつぶされたせいもあって、日本の歴史が貴族や武家による農民を弾圧支配する体制が延々と続いていたように思い込まされていますが、実態は全く異なっていたようです。
しかしこの元本が発刊されてからかれこれ20年以上が経つのですが、本書の内容は他の歴史書では全く見掛けないので、世間では全く無視なんでしょうかねぇ。

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