2017年6月4日日曜日
人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理 / 永田 和宏
著者は鉄冶金学の博士で、蹈鞴製鉄を中心として製鉄の研究をされている方で、本書が一般向けの著作としては初めてのもののようです。
が、この本の内容の濃さは凄いです。
今まで蹈鞴製鉄についての本は何冊か読んできましたが、ここまで詳細に科学的に解明され、説明しているものは初めてです。
更に日本の製鉄だけではなく、欧州の古代製鉄や、今でも残っている古い製鉄方法による農家製鉄というものも実際に見学され、解説されています。
日本の蹈鞴製鉄というのは、日本独自のものなのですが、何故独自のものになったかも解説されています。
ある意味、日本は資源に恵まれていないからなのですが、逆にそれが日本刀が日本独自のもので、半島や大陸で生まれなかった理由もよく判ります。
以前から疑問に思っていたのが、現代に残っている蹈鞴製鉄では、日本刀を製作するための鋼鉄だけが作られていて、鍋や釜を製造するような鋳鉄が作られていないのですよね。
日本刀が大量に製造された室町時代には、同時に鉄製の鍋や釜も大量に製造され普及しているので、蹈鞴製鉄の副産物として鋳鉄も作られたのではないだろうかと想像していたのですが、当たっていました。
明治初期頃までの蹈鞴製鉄では、鋼鉄と鋳鉄を同時に同じ量が同時に生成できていたそうで、長年の疑問があっさりと解消されました。
現代の西洋式のコークスを使った溶鉱炉では、燐や硫黄という鉄を脆くする元素が多くなるのですが、木炭を使った蹈鞴のような方式だと量産性が低くなります。
これの両者のいいとこ取りをした製鉄方法を考案され、本書末尾でも披露されています。
これが日本の製鉄会社で実用化されると、日本の製造業が復活できるきっかけになると思うのですが…。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿