2017年7月13日木曜日

左近 / 火坂雅史





「三成に過ぎたるもの二つ。島の左近に、佐和山の城」と謳われた、鬼左近こと島左近の一生を描いた小説です。
が、最後まで書き上げる前に、火坂氏は逝かれてしまい、秀吉が亡くなって朝鮮からの軍引き上げ辺りで終わっています。
下巻の2/3くらいまで読んだ辺りで、この調子で関ヶ原の合戦で死に至るまでが?と不思議だったのですが、連載中に亡くなられて未完結だったという。
そういう意味では、本作は氏の遺作ということになりますが、未完のため、公式な遺作は「天下 家康伝」ですね。こちらはまだ文庫化されていませんが。

島左近が主人公ではあるのですが、上巻はその頃に島左近の仇敵であった松永弾正の方が主人公なんじゃないかと思われるくらいに、登場シーンが多いです。
後に石舟斉を名乗ることになる柳生宗厳が、若き頃は松永弾正の右腕として暗躍していることが書かれていて、ちょっと驚きました。
これまで読んだ小説なのでは、石舟斉は若い頃から武術一筋で政治的なことには関わらない人物であったように描かれているばかりだったのですが。
とはいえ、柳生の郷は伊賀忍者の勢力圏であり、徳川幕府では柳生忍軍を柳生一族が率いていたわけで、当然柳生宗厳も忍術の心得があると考えるべきで、そうすると当然政治的な諜報活動も得意だったはずで、ここに描かれている姿の方が実際に近いのではないかと思われます。

さて、主人公である島左近ですが、愚直といってもいいくらいに一途で頑固な漢です。
その漢っぷりを存分に楽しめる小説です。

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