2020年10月26日月曜日

天皇の国史 / 竹田 恒泰

 

 「日本の国史」ではなく「天皇の国史」であるところが、本書の胆なんでしょうね。

冒頭から1/3くらいまでは、神話時代のことを扱っていますが、その中の記述と、最新の考古学などによる科学的データに基づいた縄文時代、弥生時代の実態とを比較して語られているところは、新しい見方であると共に、非常に重要な考察ではないかと思います。
高天原の神話は、実は史実を口伝えで代々伝えられて来た真実の可能性がある、ということですね。
口伝で数百年以上もの言い伝えなので、歪曲している部分も多いでしょうけど、全くの虚構ではないと。

この辺りは、中世期の創作である半島の神話(成立が15〜16世紀なので、本来は神話とはとても言えませんけど)とは異なります。
(大陸の神話の場合は、真実の口伝の可能性が高いですが、支配者民族が何度も入れ替わっている状況なので、真偽の確かめようもないでしょうけど)

 真実を伝えていくというのは非常に難しいことで、本書では併合直前の朝鮮王国〜大韓帝国についての記述もあるのですが、私が今まで読んだ書籍にはない記述があったりして、ほんの100年足らず前のことでも著者によって違うことを書いているわけです。
そこに歪曲が発生しているわけですが、この頃の半島は混乱の極みで、正確な資料も乏しいのでしょうね。

氏は可能な限りの資料を集め読み込み、できる限り科学的歴史学的な視点で客観的に記述説明する努力をされていると思います。
とはいえ、旧皇族という出自もあるのか、歴代の天皇の記述に関しては、ちょっと贔屓目に書かれている気もしなくはないですが、それでも歴代の天皇の殆どは真に国民の幸せと平和を望まれていたと思います。
#後醍醐天皇のように、本来天皇になるはずじゃなかったのが、兄達が次々となくなり皇位が回って来て、それを手放したくないという我が儘を言い出して、国中を混乱の極みに招いた人もいますけどね。

大正天皇は、身体が弱く、天皇としての事績が殆どないと聞いていますが、本書によるとそういうわけでもなく、在位は短いながらもしっかりと立憲君主制による天皇を務めておられたようです。
今の世の中の人達は勘違いしていますが、大日本帝国憲法は極めて厳格な立憲君主主義に基づいた憲法で、現行憲法よりもその点はしっかりと考えられて作られいます。
GHQによる憲法改正について、氏は議会の承認と天皇による発布を経ているので合法との見解を示されていますが、占領下における憲法改正の強要そのものが国際法違反なので、この見解については私は賛同できませんが。

 

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