2020年8月23日日曜日
最終結論 「邪馬台国」はここにある / 長浜 浩明
長浜氏はこれまでも古代日本について、科学的な証拠を元に極めて論理的な推論に基づいて解き明かすことをされています。
時々暴走気味で、強引な類推に走ってないか?という部分もありますが、概ねキチンとした考証に基づいており、納得できるものが多いです。
が、本書はどうも、ご本人がこれまでの邪馬台国について「都合のいい部分だけを切り出し、都合の悪い部分だけを取り上げる」「強引な類推でこじつける」ことを批判されていることを、やってしまっているように感じました。
魏志倭人伝には
「その道・里を計るに、当に倭国は会稽、東治の東方にあり」
という一文があって、現在の福建省の東海上に邪馬台国があると書かれているわけですが、これをキチンと説明した邪馬台国論を見たことがありません。
本書ではこの一文を引用しているのですが、氏の特定した邪馬台国の位置と、この一文が合致しないことについてはスルーです。
帯方郡から邪馬台国まで1万2千余里とある距離を、氏が換算したkm数と先の一文も合致しませんが、そこもスルーです。
水行10日も、川を櫂で漕ぎながら遡航したとされているのですが、この時代に川を船で遡る時は舟に縄を掛けて両岸から人足が引きながら進むという説があり、恐らくそちらの方が合理的なはずで、恐らく氏はそういう舟の移動についての資料をご存じなかったのかなと。
また魏の使者が、途中で接待を受けながら進んだから、日にちの割に距離を稼げなかったという説も、他に唱える方がおられますが、もしそうであればそれに関することが何かしら書かれていてもしかるべきと思うのですが、魏志倭人伝にはそういう記載は一切ありません。
いうなればあくまで推測の域を出ないのですが、それを事実として推論の元にされているわけです。
あり得る話ではあっても、あくまで推論は推論でしかないので、ちょっとここは強引かなと。
まあ、そんな感じで、科学的理論的な考証を売りにする氏にしては、ちょっと筆が走りすぎてないか?という気がします。
この時代の列島における文化・文明度についての推測は、なるほどと思われるものも多いので、本書を読む価値はそれなりにあります。
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