2021年1月9日土曜日

奥州戦国に相馬奔る / 近衛 龍春

 

近衛氏の作品は面白いと思いつつも、気が付けば氏の作品を買うのは15年振りになるらしいです。
うーん、なんでやろ?
本作も、戦国武将としては余り有名ではなく、江戸時代の藩としても小藩で、数多ある戦国時代の小説でも殆ど登場することのない相馬義胤を取り上げるというのが珍しいのですが、その有名ではない=資料が少ない武将についての生い立ちを調べるのは、かなり大変な時間と労力が掛かったでしょうね。
巻末の膨大な参考資料の一覧を見ると、それがよく分かります。

相馬というと、どうしてもJリーグ創生期に、鹿島アントラーズ〜ヴェルディ川崎と日本代表として活躍した名左サイドバック選手が思い浮かぶのですが、現代の福島県海沿いにある地名ですね。
古代から名馬の産地として有名で、故に地名に「馬」の字があるわけで、本作でも名馬の産地であることが物語の鍵の一つになっています。

東北震災の時に、ここより海側には家を建てるなというような碑が建てられていたのを無視したために、被災にあったという報道もありましたが、義胤の時代にやはり大地震と津波が2回もあって、大変な被害にあった様子が描かれており、碑はその時に義胤が建てさせたものだということが描かれています。
その時に津波が押し寄せた区域と助かった区域を明確に分けて、地元民が被害に遭わないようにとの対策の一環として行われたそうですが、時が経つとそれが忘れられて、便利さから海沿いに住む人が増えるのは仕方がないことなんでしょう。

小藩の大名が生き抜くために、如何に知恵を絞ったか。
その物語は、現代の企業戦争にも参考になるかも知れません。

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